台湾のTPP参加の意見書

この11月議会において
「我が国の経済発展に資する台湾の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への加盟に向けた積極的な取



り組みを求める意見書案」(以下意見書)を上程し、採択する事を試みたのですが、様々な事情から上程する事を断念しました。

現時点で所属する自民党県議団として次回再提出に向けて調整をするという事を、会派総会に於いて確認をしました。
ただ、後述の通りこの時期にこだわった理由もあり、意見書の内容及び上程しようとした切っ掛け、動機を報告しようと思います。


切っ掛け 

8月の自民党青年局での台湾訪問に続いて、去る9月
14日から15日にかけて、「*1三重の夜明け」という 鈴木英敬知事を応援する県下の市町議員の会で台湾での研修に参加しました。

台湾に関しては、震災時に義援金を送ってくれたり、台湾統治時代にあった日本人と台湾人との間に起こった有名な幾つかの話や、総じて親日的であるという事は知っていました。
しかしこれまで台湾に訪れた事はありませんでしたが、2回も続けて訪台した事で知識が体験に変わり、日本は台湾との関係をもっと密にすべきだという考えに至りました。その理由については後段で取り上げます。

鈴木知事のこれまで築いて来た関係のお陰で、総統府で陳建仁を訪問する機会を頂きました。知事と副総統との対談の中で「三重県庁や三重県議会から、日本政府に対して働きかけをして欲しい」という言葉があり、出来る限りのことをしてみようと思ったのが発端です。



動機 

意見書提出の動機は大きく4つあります。
1. 総統選の為
2. 国防上の理由
3. 経済上の理由
4. 心情的理由
今回の定例会11月および12月の議会での採択にこだわったのは動機の1番目、総統選です。ほかそれぞれの動機について詳細を説明します。

    1.    総統選 

1月11日は台湾の総統選の投開票日です。8月に自民党青年局で訪台した時の出発前レクでは、民主進歩党(以下民進党)の蔡英文現職と台湾国民党(以下国民党)の韓国瑜氏はほぼ五分五分。結果立候補はしなかった様ですが台北市長の柯文哲氏がもし立候補したら、蔡総統の票を食う可能性があり逆転するかもしれない。という話でした。
中華人民共和国政府は露骨な台湾への経済的圧力をかけています。
今年の年始に習近平国家主席が台湾に一国二制度を迫る発言をした事に対して、蔡総統が反発し即座にこれを拒否する正名を発しました。

「一国二制度」台湾に迫る 中国の習近平氏が演説


一国二制度「絶対に受け入れない」 台湾の蔡英文総統が拒否


中国の圧力、逆効果も=台湾、個人旅行停止に反発


習主席はこの後台湾への個人渡航を禁止する経済的圧力を台湾にかける事になります。丁度私が自民党青年局の研修で初めて訪台した時の直前の事。元より蔡英文総統の続投に向けての課題は、経済改革の実感が薄い事だった様です。そこに加えて露骨な経済圧力がかけられた訳です。

台湾・蔡英文政権が20日で発足2年 支持率低迷、望みは米国?



何かしら台湾の経済に資する様な事が出来ないかと考えていました。
8月に自民党で訪台した時も、蔡英文総統や台湾の首相に相当する蘇貞昌行政院長も口を揃えて台湾のTPP加盟を支援してほしいと言っていました。そして先述の通り鈴木知事と面会した陳副総統も同様の話をしました。

* 台湾にとって、大きな自由貿易の枠組みに入る事がこれからの経済発展の為に重要だという事。
* 蔡英文総統にとって、経済的な明るい方向性を打ち出せる事が、経済が良くなっていないと感じている有権者に対してアピールできる、選挙戦の大きな助けになるのではないか。
そんな事を考えました。
そこに、我々三重県議会が意見書という目に見える形で日本の政府に対して、TPP加盟を後押ししたという実績を残す事ができれば、三重と台湾の関係に大きく寄与するだろうと思った訳です。
当然台湾のメディアも取り上げた事でしょう。実は意見書作成の段階で分かったのですが、平成30年に和歌山市議会が似た趣旨の意見書を提出し、これを台湾メディアが報じているのです。

だからどうしても総統選の前にこの意見書を提出したかったのです。


    2.    国防上の理由 


トランプ政権、台湾への新型戦闘機売却を正式承認
https://www.cnn.co.jp/usa/35141538.html

多分このニュースだったと思います。21日の朝、台湾のホテルの部屋で腹筋をしていた時、CNNがこれを報じました。
中華人民共和国(以下PRC)の覇権政策はとてもアグレッシブだと思います。
* 内陸部の自治区で起こっていると言われている生体からの臓器摘出、民族浄化。
* 南沙諸島での軍事基地の建設。
* 尖閣諸島付近で毎日のように行われているPRC籍船舶の領海侵犯および威圧的航行。
* 領空付近に接近する戦闘機に対するスクランブル発進一日平均3回。うち半数がPRCの機体。
* 平成31年の年始に習近平主席は台湾に対して「一つの中国」を、即ち台湾が中国の一部である事を認めよと迫った。
* そして3月に起こった香港の民衆化デモに対するPRC政府の対応。
これらの事はこの政権の暴力性をよく表していると感じています。

台湾が仮に武力によって制圧される様な事があれば、当然その先にある沖縄にも触手が伸びるでしょう。日本列島から台湾にかけての海域は、PRCにとっては彼等が太平洋に出る事を妨げている蓋だとかねてから言われています。
ましてや韓半島においては北からのミサイル発射は止む事がなく、南部は慰安婦や徴用工の問題に加えて日本の哨戒機に対するロックオン、さらにはGSOMIA軍事情報包括保護協定の破棄の意向が示され、東アジアにおける日韓米の協力体制が大きく揺らいでいる。
自由、法治、民主主義といった共通する価値観を有する国が協力関係を強固にせねば、東アジアの平和は粗暴な覇権国家によって破壊されてしまうかもしれない。
武力による台湾侵攻がなかったとしても、親中派政権に台湾を奪われてしまったら、日本の安全保障上大きな問題になるでしょう。
私が蔡英文総統の再選を願う理由です。

    3.    経済上の理由 

随分前にフィリピンには行ったことがあります。韓国は何度か。今回の訪台は議員になってから初めての東南アジア渡航でした。経済的活気をまざまざと見せつけられました。機会があればベトナム、タイ、シンガポールなども訪れてみたいと思っています。
経済は国力の重要な柱の一つです。日本の経済は少子化に伴い確実に衰退していきます。数は力です。我々日本は人口がこれから劇的に減っていく。それでも国力を維持していく為には知恵を働かせねばなりません。だからこそ今まだ日本の国力があるうちに、
次の時代を支える戦略を立てておく必要があると思います。
今活気のある台湾他東南アジアの国々と経済的な協力関係を密にする事は、日本の未来においてとても重要な事だと、肌で感じました。
TPP11はアジアだけでなくアメリカ大陸にも広がる条約ですが、日本がルール作りに積極的に加わって創り上げた枠組みです。これが日本にとってのこの経済協定の持つ価値です。

第一次安倍政権時代、当時の麻生外務大臣が「自由と繁栄の弧」というスピーチを しました。日本の価値観外交の始まりです。当時GUAMと呼ばれたGeorgia, Ukraine, Azerbaijan, Moldovaの4カ国の反ロシア的な性格を持つ経済機構にGUAM+日本という協力体制も組まれ、家内の国モルドバが入っていのをよく覚えています。
自由と繁栄の弧とは日本から東南アジアを経由してコーカサス地方から東ヨーロッパまでの弓のように曲がったラインを弧として、日本が主導する経済協力体制のことです。

まだ自民党が与党復帰をしていなかったとき、麻生太郎先生が自民党政治塾にお越しになり自由と繁栄の弧の話をされました。その時事例として出されたのが、インドの地下鉄建設の話。詳細はリンク先に譲りますが、建設現場における日本式の厳格なルール、時間厳守、約束=納期、などが浸透し、公共交通機関の遅延が当たり前の国でこの地下鉄だけは時間に性格に運行されているという。東南アジアを含め多くの国が日本に期待を抱いています。
日本は経済的な援助だけではなく、日本の文化の輸出によって日本と共に発展を築き、経済成長の先にある平和な国家形成までもリードしていこうという考え方です。

とてつもない日本


 自由と繁栄の弧、日本の価値観外交の策定・実行の中心的役割を担った谷内正太郎氏はつい先日まで内閣特別顧問を務めておられ、TPPも含めた第二次安倍政権の外交戦略にも引き続き影響を与えたと考えられます。ここで提唱された価値観外交は現在の政策にも確実に継承されていると考えています。

自由、民主主義、法治、市場経済、基本的人権といった共通の価値観を有する台湾は、いわば自由と繁栄の弧の出発地点に位置します。

政権が変わったとしても中国に傾倒してしまう事のないように、台湾経済と深く繋がっていく事は重要なことだと考えています。

    4.    心情的理由 

八角の匂いがダメだと、一緒に行った何人かが言ってましたが、私全然平気。 夜市の屋台もホテルの料理も美味しかったです。
少し飲み足りなかったのでホテルの前にあった小さなバーに入りました。カウンターに女性が1人だけの店で、客も私だけ。youtubeでかけてた店内の曲をわざわざJ-Popに変えてくれて、日本の歌が好きだと言ってくれた。iPhoneに入れてあるGoogle翻訳アプリに活躍してもらってなんとか会話をした。友人が日本人と結婚していて何度か日本にも行った事があると言っていた。日本が大好きだと。
2回の訪台でバスガイドさん3人から話を聞いたが、リップサービスもあったと思いますが、みな日本贔屓の人たちでした。

台湾北部にある桃園市には、1938年に建てられたら桃園神社が遺産として残っています。戦後台湾に移ってきた外省人がほとんどの神社を破壊したのですが、ここは神社としては機能していないものの綺麗に復元され保存されています。

桃園市忠烈祠-桃園神社



桃園でも台南でも八田與一が作った水路やダムは今でも大事に使われ、台南にある與一の住んだ家は今修繕され記念館として公開されています。與一の功績は勿論のこと、與一の妻外代樹が台湾の子供のために伝染病の薬の調達に奔走したというエピソードが書かれていたと記憶しています。夫婦共に今も慕われています。
八田與一の功績を讃えたかった地元の住民は、本人を説得して與一の銅像を造ります。戦争末期に金属徴収を行った政府が與一の銅像を持っていったが、地元の住民が夜な夜な倉庫に忍び込んで盗んで帰ってきたという有名な話があります。

日本人として単純に、日本人が蔑まれていたらいやな気分になるし、讃えられていれば嬉しい。
なぜ多くの日本人が讃えられているのか。日本統治時代の台湾にどんな日本人がいて、台湾人とどんな関係を築いていたのか。そこを知るとなんとなくその理由がみえてくると思います。

正論一月号の記事になっていた門田隆将さんの講演録に取り上げられていたエピソードを読んで、また目頭を熱くしました。

* 芝山巌事件と言われる6人の教員が殺害された事件では、暴徒が向かっているから逃げろと知らせてくれた村人達に、「吾等は教育者である。身に寸鉄を帯びず。死して余栄あり。実に死に甲斐あり」と言って逃げ出さず。暴徒を説得するも結局殺害されます。台湾の教育に賭ける犠牲精神は「芝山巌精神」と言われ、人々の間で語り継がれるようになったそうです。

台湾人の心にのこる〈日本精神〉


* 西来庵事件で警察官だった父を失った坂井徳章さん。台湾で生まれた日本人。その後警察官になりますがこれを辞し、父を台湾人に殺されたにもかかわらず台湾人の人権を守るためにと弁護士になります。日本の敗戦後台湾に入ってきた国民党の暴政に反発して2.28事件が起こりますが、坂井さんは暴徒を鎮めにまわります。暴動が収まったところに台南に入ってきた国民党軍は血祭りに上げる対象が居なくなったので、見せしめに日本人だという理由で坂井さんを逮捕し死刑を宣告します。何の罪もない坂井さんは全てを背負って死を決意し「台湾人万歳!」と叫んで処刑されたと言います。李登輝元総統のもと民主化された台湾で坂井さんの処刑現場は祈念公園になり、ご命日が「正義の中期の記念日」に制定されているそうです。

台湾で「英雄」となった知られざる日本人



*1「三重の夜明け」というグループは8年7ヶ月前の鈴木知事初戦の知事選に先がけて作られたグループで、私も同時期に当選したことから市議になって早々に仲間に加えて頂きました。本来市議・町議の会ではありますが、今回県議になったものの、引き続きグループに置いていただいています。

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