[書評]曠野の花:石光真清

石光真清の手記2冊目

4冊シリーズで一番最初に読んだ本。

真清は日清戦争に加わり死線を越えて帰国するも、三国干渉により遼東半島を放棄せざるを得なかった。満州侵略を目論むロシアに対して、いずれ日本はこの国と一戦交えねばならぬ事になるかも知れないと感じた。

そして帰国後ほどなくしてロシア留学を志す。勿論軍人としての身分は隠してブラゴヴェヒチェンスクのロシア軍人宅に寄宿する事になる。そこで真清はカザック兵による清国人3000人の虐殺を目の当たりにする。川を挟んだ清国とロシアの船の行き来に関する僅かな交渉の決裂が切っ掛けで、清国が対岸に砲撃を開始、カザック兵はロシア側に在留していた清国人ことごとく殺害する。これを切っ掛けにロシアはブラゴヴェヒチェンスクに兵を結集し、北満へと侵攻を開始する。

真清は滞在期間中馬賊の長の妻になった元娼婦や、博打にうつつを抜かした壊れかけた日本人宿の店主、同じくしてスパイ任務を受けて僧侶を装っている軍人などにであう。真清も僧侶もお互いがスパイだろうと感じるのだが、自ら身分は明かさない。

壊れかけた日本人宿に僅かな資金を提供し、宿を建て直しねぐらにしたり、馬賊の長の日本人妻が切っ掛けで、馬賊と親密になる。

馬賊の長は自国が侵略されるのを目の当たりにし、復習を望むも時期尚早と考え力を蓄えるために潜伏する。

その後真清は更にロシアの行動を探る為、清国の苦力に成りすまし舟で川を渡ったり、ロシアに雇われた朝鮮人スパイを煙に巻き、馬賊の協力を得て身を隠したり、戦禍を逃れてきた日本人娼婦を保護し救済するなど、この本には007さながらのストーリーが書かれているのだが、これら全てが真清の手記、すなわち実話である事が面白い。

当時の清国の置かれた立場、ロシアの目論見、ほか当時大陸に身を置き生計を立てていた日本人の生活、多の民族との関係など見事に描写されている。

ロシア留学を隠れ蓑に始まった真清のスパイ活動は日露戦争勃発と共にその任を終え、帰国することになる。

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