妻のパスポートの別姓表記

小林姓を名乗ることの喜び

誤解無きよう 冒頭にまずお伝えしておく。

私の妻ステラは、帰化する事で家族と同じ小林姓を名乗ることを何よりも喜んでいる。やっと私や子供達、皆と同じ名前になる事が出来たと。

妻の出自はモルドバ共和国であり、母語はルーマニア語。そしてチーズが入ったパンを焼きザーマという自家製パスタの入ったスープを作り、ワインを飲む。彼女はモルドバ人としてのアイデンティティを放棄したわけではない。

しかし妻は私と結婚し、共に日本で暮らしていくことを決断した。子供達と共にこの国にこれからも生き、そして日本の社会の一員として仕事をし、貢献し、投票し、納税し、社会保障を受け、生活をしていく。彼女の帰属する社会が、モルドバから日本に変わったわけだから、帰化は当然行政上必要な手続きだと、我々夫婦は考えている。

そして私はまかり間違っても、妻が日本を離れ母国に戻らなければならないような状況を作ってはならないと言う責任を負っている。端的に言えば私が家内を裏切り離婚しなければならないような状況だ。

そこまで確認し、妻が帰化することを夫婦で決めた。

そして、妻と共に妻が日本人になった事を喜んだ。

これからは日本人と同等に扱ってもらえるものだと思った。

旧姓併記について

しかし、妻は身分証明書に旧姓を併記する事が出来無い事が市役所の市民課で分かった。

理由は「旧姓の戸籍がない」からだ。

ちょっと待ってくれ。

妻は私と婚姻関係にあるから配偶者ビザを取得し、結婚生活を営み、その事実の積み上げによって帰化することが許された。

帰化して初めて戸籍を取得した。

だから私と婚姻の事実で帰化が叶った妻の場合、結婚する前の戸籍を「外国人であった妻は」取得する手段が存在しない。

言い換えれば、妻は日本人ではないが故に旧姓を表記することが出来ないという事だ。

帰化をしたのに日本人と同様に扱ってもらえないという事に、とても残念な思いがした。

帰化が受理された後、買い物に行った妻が「空気が違う」「私もほかの人達と同じになった」といった言葉が忘れられない。

旧姓を証明する必要性

勿論、旧姓を証明する現実的に必要な理由がある。

未成年である子供達はモルドバにも籍がある。彼らはいずれ成人して日本国籍を選択すると思うが、それまではモルドバにも住民登録がされている。母親は「小林ステラ」ではなく「Casian Stela」で登録されている。

パスポートに旧姓として「Casian」の表記が無ければ彼女が子供達の親である証明が出来ない。

東側の国で行政手続きを行った経験のある人であれば、これが如何に面倒な事態を引き起こしうるか容易に想像がつくと思う。

旅券センターに行って、旧姓併記を依頼したが市役所と同様に無理だと言われた。


新たに作成された戸籍には「従前の氏名」として「カシアン・ステラヴァシーレ」という記述があるにもかかわらず。(ヴァシーレは妻の父の名で、モルドバでは自分の名前の後ろに父の名を加えるのが正式)

旅券センターは外務省に問い合わせてくれた。その回答は実に残念なものだった。

「帰化したのだから日本の姓を名乗るべきだ」

そんなことは夫婦共に承知している。

稲田朋美先生

先日三重の政治大学院に稲田朋美先生が起こしになった。この案件、基本的には諦めていたのだが、最後の質問でウクライナの問題、隣国の家内の国の事に関して言及した後、個人的なことと前置きをした上で、我々の直面した現状を知って頂こうと思い、旧姓表記の事についておお伝えした。

初めて聞く状況なので改めて詳しく聞かせて欲しいと言って頂き、後に書面で詳細をお伝えした。

早々に動いて頂き、秘書の方から外務省の方に伝えて頂き、「旧姓」ではないが「別姓」での表記が出来る様に取り計らって頂いた。

更に、本日秘書の方から連絡があり、三重県の旅券センターから状況を聴取した外務省が、各地の旅券センターに同じように配慮するよう通知があったという。

妻と同様に婚姻によって帰化した元外国人がパスポートに従前の姓を(別姓)として記載する事が可能になった。

帰化のすすめ

日本に住む外国人にとって、帰化申請はとてもハードルが高く、メリットは少ない。ほとんどの社会保障は帰化せずとも日本人と同様に受けることが出来る。そして帰化申請のおりに法務局で訪ねられる質問や、証明しなければならないものは、時に屈辱的に感じる事すらあった。

しかし、私は帰化申請は厳しくて良いと思っている。

日本の国籍、日本のパスポートはとても価値が高い。これは日本人の先人が、名実ともに血と汗によって築いてきた信頼があるからだ。

だから、便利さだけを求める外国人に対し容易に帰化を許可すべきでは無いと思っている。

家内の国では憲法を学ばせ、試験に通らなければ国籍を付与しないという。国籍を受容しようとしている国が、どのような文化を持ち、どのような国であり、どのような精神を掲げているのか、学ぶべきであるという主張は至極もっともだと感じる。

(もっとも現在の我が国の憲法は、英文を翻訳したものであり、日本の文化や歴史を反映したモノではないので、これを学ばせてもあまり意味が無いとは思うが。)

だからこそ、日本に住み続ける事を決め、日本と共に未来を共有し、日本の社会を構築する一員として、我々と共により良い日本を創る者としての覚悟を有する者が、厳しい審査の末帰化を許された場合には、出自を問わず日本人として扱われるべきである。

そのように日本で生きる覚悟を決めた元外国人に、差別的扱いをする日本人は居ないだろうと信じている。

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