2013年7月6日土曜日

クウェートと移民政策


とある理由でSara Akbarという女傑の講演の通訳を引き受けた。
非常に興味深い女性なので彼女のことはまた改めてアップする。

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5日に上京して事前の打ち合わせをした女史ご本人と二人の秘書と夕食を共にした。

その際に非常に興味深いクウェートの状況を聞いた。

クウェートは全体で290万人しか居ない小さな国だ。
驚くのは半数以上が外国人移民だと言う事。

wikiによれば人口の構成は以下の通り
住民は、アラブ人(クウェート人)が45%、アラブ人(クウェート以外の地域)が35%、南アジア系(印僑)が9%、イラン人が4%、その他が7%である。


クウェート以外の人間が人口を占めると聞いて最初に尋ねたのは選挙権だ。
もちろん外国人に選挙権はないと言う。

「当たり前だよ。彼らが選挙権もったら我々は端っこに追いやられちゃうよ」と笑って答えた。

次に聞いたのは社会保障のことだ。
クウェートでは全ての社会保障が無料だという。
学校は大学までタダ。医療も3ドルほど払えば何でも治療してくれる。もちろんガンなどの高額医療も存在するが、3000ドルも出せば何とでもなるらしい。
そして全ての子供に児童手当が付いて150ドルほど支給され、加えて大きくなれば400平米の土地が与えられ。家まで建ててくれる。死ぬときには葬式の一切の費用と墓石まで国が面倒を見てくれるという。

これが可能なのはもちろんクウェートが世界有数の産油国で、国が非常に豊だからだろう。

ただ、この社会保障はクウェートの国民にのみ許されている。
そしてクウェートの国籍を取ることは非常に難しい。
1920年頃にばっさり基準を切って、以降父方の血統が無い限り、ないしは年に2000人だけ、技術や学問や何らかの専門分野でクウェートに貢献した外国人が国籍を取得することが出来る。

非常に狭き門だ。

クウェート人以外の子供達は国営の学校に行って無償の教育を受けることは出来ない。高い学費を払って私学に通わせるしか無い。
と言うかわざわざクウェートで家族と生活をし、子供を私学に通わせることが出来るのは外交官なり仕事の関係で家族ごと移住せざるを得なくなった人間で元より収入の高い人達。

外国人がわざわざクウェートで生活するメリットは殆ど無いらしい。よっぽどの高収入で無い限り教育も、医療もまともに受けられないし、外国人は土地を買うことすらそもそも出来ないらしい。即ち家も建てられない。

すなわちクウェート人の人口よりも多い数の外国人の大多数は家庭を持たない単身で出稼ぎに来た単純労働者。
外国人が家庭を築いて生活をする事を望むなら、どうぞ本国で。という意思が非常に明確に示されている。

当然失業手当や生活保護も外国人には適用されない。
仕事がなくなれば帰りなさい。というだけのこと。

労働のために渡航したものが職場を失えば役割を終えて帰るのみ。
非常にハッキリしている。

クウェートの一般家庭には家政婦、シェフ、ドライバーの3人がだいたい働いているのが当たり前だという。これらをまかなっているのが外国人労働者。

元々クウェートは油田が見つかるまでは貧困で、地元で精算できる物は殆ど無く水すらイラクから輸入していたという。
彼らの収入の糧は魚介類を捕ること。特に天然の真珠を取って売っていたらしい。残りは貿易。インドから香辛料を買って西側に売る。また西側から買ってきたものを東側に売る。そうして長い間生きてきた。

異なる民族と貿易と交渉を重ねてきた国だからこそ、外国人との関係になれており、移民政策の目的もシステムもハッキリ明確なんだろう。

初めから明確だから働きに来る人間も割り切っているのかも知れない。
契約内容というのは明確であるに越したことは無い。曖昧な記述が原因で誤解を生んで後からトラブルが発生する契約は良い契約とは言えない。

果たして我が国の政策は多くのことが曖昧で、結果双方が共に満足しない内容に成ってはいまいか。

よかれと思って差し出した例外的援助が、意図的につけ込まれて濫用されているケースも散見される。そして裏切られたと怒る。

これは国のシステムに限った話では無いとも思う。個人のレベルでも、商売のレベルでもよくある話では無いのか。

我々は相も変わらず世界の中で非常識な国家なのかも知れない。

この話を聞いてふとそんなことを考えていた。




参考
2011年の一人当たりのGDP47,982ドルであり、世界的にも上位に位置する。富裕人口の割合が非常に高い国であり、およそ8世帯に1世帯が100万ドル以上の金融資産を保有しているとされる

石油が主要産業であり、世界第4位の埋蔵量がある。

引用wiki