子どもの楽園
逝きし世の面影 という本に魅了されている。 江戸末期から明治初期にかけて日本を訪れた外国人の手記を比較検討し、カテゴリーごとにわけそれぞれの観察者の視点から当時の日本人の生活、姿を映し出そうとしている書籍である。 有名な本らしくおそらく読まれた方も見えるだろう。 今日目を通した章の特に第十章「子どもの楽園」は色々考えさせられる内容だった。 ********************************* 当時の日本のおかれていた「封建社会」と呼ばれる社会構造の中では、 下層の住民は上層の住民に隷属され搾取され苦しんでいるかのように語られることが多く、また西洋における封建社会においては全くその如くだったのだろうと思う。 ところが、封建社会を革命によって打ち破り民主国家を作ったと言われるフランス人の手記もこの中に含まれ、他イギリス人、ドイツ人、ロシア人、様々な手記が引用されるのだが、いずれも日本の農民および一般の民衆が非常に「自由」であり、大凡下層とは思えないほどに自らの社会のことに関して自主的に統治する権限が認められており、その決定方法はいたって「民主的」であることに驚いている。またどの顔も楽しそうであり無邪気であり幸福に満ちていると記している。そして彼らはその現実を目の当たりにしに少なからず驚きを表している。彼らの知るヨーロッパ的な封建社会の実情とは随分異なるからだ。 他の章になるがむしろ武士の上層階級の方が堅苦しい規律などに縛られて不自由にみえると言うのであるから面白い。 ************************* さて子どもに関してである。 とにかく日本の社会は子どもを溺愛していると記している。それが下層の子どもであってもとても大事にされているという。 どの階層においても子どもを自由に遊ばせ路上を裸では走らせるままにしており、どれだけやんちゃを働いても叱責するようすが見られないという。彼らほど愉快で楽しそうな子どもはヨーロッパにはいないとまで言っている。 ポルトガルの宣教師ルイス・フロイスは「我々の間では普通鞭で打って子どもを懲罰する。日本においてそういうことは滅多に行われない。ただ言葉によって譴責するだけである」と言っている。 また子どもが転んで痛くしたとか、...